俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
声がする方に振り向くと春多くんが、こっちに走ってきた。
「珠里さん、大丈夫?」
「春多くん!?学校は?」
「終わったとこに、あの人がっ、来て。……えっと真木さんが、血相かえてあんたのこと心配してたから急いで…」
汗だくで息を切らす春多くんにふわりと抱き締められるから、ちょっと懐かしい気持ちになって、私もこの子の背中に手を回した。
「別にー。私が連れ回されたんだし。珠里ちゃんの検診に付き合ってあげただけよ!」
私達に呆れた視線を向ける彼女から、棘のある台詞が吐き出される。
「俺っ、珠里さんが愛奈に、何かされるんじゃないかって気が気じゃなくてっ……、」
「何よー、人聞きの悪い。私、悪者じゃないわよ?」
「マジで大丈夫だった?」
春多くんが眉を下げて、下から覗き込んでくる。私の事を本当に心配してくれてるのが伝わってくるから、少し泣きそうになって小さく頷いた。
「愛奈、ごめん。俺、遺伝子の提供しないから。俺なんかに執着しないでさ、早く違う相手見つけろよ?候補なんて、いっぱいいんだろ?俺はさ、珠里さんとお腹の子供と家族になるから──」
「えーーー、家族ぅ??春くんって家族に憧れてたの?意外ねぇ。あなたは家族なんて全然興味無いと思ってた」