俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「へ……?私とだけは、ってどういう事?」
「あんただけは無理」
言いにくそうに表情を曇らせるから、何か理由があるのは伝ってくるけど"私にだけは無理"って何?
春多くんの言い方があまりにも冷たいから、ずっと気にしないようにしてた事が心のモヤモヤが大きくなっていく。
「そっか、結婚してくれるって言っても私はどうせ他人だもんね。ごめんね、私なんかが春多くんのプライベートな所に入り込もうとして」
こんな嫌みな事が言いたいわけじゃない。
誰にでも言いたくない事の1つや2つあるのは、よく分かっている筈なのに。
「違げーよ、そういう意味じゃなくて」
「じゃあ、なんで何も話してくれないの?和泉くんだって、愛奈さんだって、春多くんのこと知ってるのに、私だけ部外者なんて……」
困らせたいわけじゃないのに、この子を攻める言葉が止まらない。
「言い方が悪かった。けど、まだ紹介はできない」
「……っ、」
違うのに。ただ、話して貰えなくて寂しいだけなのに。
じわり。涙が目に浮かんでくるから、慌てて右手で擦る。
春多くんのお母さんの事も、あの鍵のかかった部屋のことだって、私だけ何も知らない──。
「えー、珠里?こんなところで何してるの?」
え?自分の名前を呼ばれて、聞き覚えのある声に一気に血の気が引いた。
「んなっ、何で?お母さんとお父さんどうしたの??」