俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
春多くんの台詞に、部屋が静まりかえって異様な空気が流れる。
「ちょっと、お父さん!そんな言い方しないでよ!春多くんも、わざわざ言うことじゃな…」
「いいんだ、俺の父親がロクでもない奴なのは確かだから。若い女に手を出してよそで子供作ったのは事実だし」
「でも、春多くんお父さんのこと尊敬してるって言ってたじゃん」
ていうか、これからおばあちゃんがお世話になる病院の院長先生なんだけど。
「お父さん!私が安定期に入ってからってお願いしたの」
「いや、珠里さん。妊娠の報告は後になっても、結婚前提のお付きあいと同棲報告の挨拶には伺うべきだったんだよ」
「待って!春多くんは悪くないの私が悪いの!」
「珠里さん……」
真面目な顔をしていた春多くんが頬を赤らめて眉を下げた表情に変わるから、可愛くて頭をギュッてしたくなる。
(イチャイチャしてるようにしか見えない)
この子の頭に手を伸ばそうとした時、ゴホンと、自分の父親の咳払いが耳に入って我にかえった。
危なっ、自らイチャついちゃうところだった……。
「そ、れ、で、君のご両親への報告もまだなのか?」
「父には報告をしましたが、母はまだ知りません」
「もう、お父さんったら!尋問ばっかじゃなくて楽しい話にしましょうよ!春多くん、綺麗な顔立ちしてるし、お母さんとっても美人な方なんでしょうねぇ!」
父の棘のある台詞に続いて、お母さんのフォローが慌てて入ったのに。
「母は事故の後遺症があって、今は報告できる状態ではないんです」