俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~



春多くんに連れて来られたのは療養型の有料施設だった。1階建てのシンプルな白色の綺麗な建物。

ここに、春多くんのお母さんいるのかな。
落ち着かない様子で周りをキョロキョロと見てしまう。


建物の中に入り受付の事務の女の人に声をかける。カウンター上にある面会用紙に名前を書き入れる春多くんの姿を後ろから覗いた。



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入所者名:川田 夏美
面会人(続柄):河本 春多(子)

時間:15:10~
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お母さんと名字、違うんだ。



──今、親権アイツだし


前に話していた春多くんの台詞を思い出す。親権は院長先生にあるって言ってたから、それに関係してるのかな。



「ん、これ?親権が母親にある時は、俺も川田だったんだよ。大学2年から親権がアイツに変わって河本になった。それで、世間的にはアイツの孫って事で噂が広まったんだよ。名字なんてどっちでもいーけどな」

「そ、うだったんだ」

「あ、そこの106号室だけど、今日の反応分かんないから、あんたはちょっと離れててね」






スライド式の扉が開くと、髪の長い女の人の姿が見えた。
春多くんに気が付いたのか、表情がぱぁぁぁと明るくなっていく。




「わぁ、宗一郎さん!来てくれたんですね!」


リクライニングベッドに座る女の人が嬉しそうに笑った。



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