俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「うん。元気だった?」
「えぇ、みんな優しいし。そっちは……病院の方は忙しいの?」
「うん。昨日もオペが入ってたけど、そんな難しくないやつ…」
「大変ねぇ。ゆっくりして下さいね」
あれ、聞き間違い?
宗一郎さんって呼んだ気がしたんだけど。春多くんは動じず会話を続けている。
うちのお母さんより若くて、ふわふわした優しそうな女の人が穏やかな笑顔を見せる。
「ねぇ、宗一郎さん。春ちゃんは元気にしてる?勉強頑張ってるかしら?」
「うん、無事に6年生になったよ」
「ふふっ、春ちゃん頑張り屋さんだものね!でも、全然会いに来てくれなくて。親として寂しいわー」
「うん。じゃぁ、お見舞いに来るよう言っとくね」
なにこれ、目の前に春多くんがいるのに──。
廊下で立ち尽くしてると、春多くんのお母さんとバチッと目が合った。
「…………宗一郎さん、あの女は誰?新しい女?」
突然、部屋に響き渡る低い声。
私に向けられているのだと、理解するのに少し時間がかかった。
「また奪いに来たんでしょう!?私から宗一郎さんを!」
「ち、違っ……」
さっきまで穏やかな表情をしていたのに、瞳が見開かれて優しそうな顔がみるみると歪んでいく。
ベッドから勢い良く立ち上がろうとして、左側にふらつくから春多くんがサッと支える。
「許さない!!あんたなんかっ……。人の男を横取りするような女なんてっ、」
「夏美さん、あの人は新しい職員さんだよ」
春多くんの穏やかな声に、「あらー、そうなの?」と女の人がそう口にした。