俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
あんたが好きだよ
店内に足を踏み入れると、ベストスーツ姿のウェイターさんが「いらっしゃいませ」と頭を深く下げた。
窓から綺麗な夜景の見えるお洒落なレストラン。大理石調のピカピカな床、モールディング風の真っ白な壁には高そうな絵画が飾られている。
春多くんのお母さんの施設に行って、そのまま高級レストランで食事をする事になったのだけど。こんな高そうなお店はじめてで戸惑いを隠せない。
「ねぇ。私、普段着なんだけど」
「平気だよ」
私も春多くんもドレスコードではないけど、完全個室の部屋だから気にする事はない、らしい(春多くん曰く)。
ウェイターさんがワイングラスに水を注いで、英語の文字が入ったメニュー表をテーブル上に並べていくけど。
その金額が0の数が多過ぎる恐ろしい金額が並んでいて一瞬頭が真っ白になる。
「このシェフのおすすめコースの……メニュー全部ハーフサイズに出来ますか?金額そのままでいいんで」
「ええっ!?何でハーフ?」
私の声だけが大きく響くから、慌てて口を塞いだ。
春多くんがフッと余裕気に自分の人差し指を口に当てて"シー"と仕草を見せるから、ちょっとムカつくな。
「すみません。彼女、妊娠していて病院で体重指導が入ってしまって……」
「そうでしたか。シェフに確認してきます。お待ちください」