俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「お待たせしました。デザートのショコラケーキになります」
丁度、ウェイターさんが次のお皿を運んできて、我に返ったけど。
春多くんが大人の男の人に見えたから驚いた。いや、年下とはいえ大人なんだよね。
テーブルの真ん中に置かれたのは、小さな丸いチョコレートケーキで花火がパチパチと小さな火花を散らしていた。
「わぁ、花火だ!可愛い!テレビとかSNSで見たことあるけど。実際に刺さってるの見るのはじめてー」
高級なレストラン。窓から見える夜景。豪華なコース料理。
今まで生きてきた28年間。こんな贅沢したことないから、気持ちが舞い上がってはしゃいでしまう。
「俺もはじめて」
「あは!なんか、凄すぎてプロポーズでもされるみたい!」
「そうだよ」
「へ?」
橙色の火花を散らして、バチッと花火の音が鳴ってフッと消えた。
目の前に、白色のリングケースがポンと置かれる。
向かいに座る春多くんが手を伸ばして、そのケースを開けると、リボンの形をした指輪が入っていた。
「卒業したら籍入れるって話はしたけどさ、ちゃんとはしてなかったし」
「え、え……」
「本当は、来月の珠里さんの誕生日にって思ったんだけど。今日、言いたくなった」
春多くんの真剣に真っ直ぐ向けられる視線を反らすことなんて出来ない。
「あんたが好きだよ。俺と結婚してよ」