俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「いや、一応……初孫になるからね」
初孫!?確かにそうなるのかもしれないけど。私との結婚、反対してたんじゃなかったっけ。
「とりあえず座りなさい。1人の体じゃぁないんだから」
「は、はい」
促されて向かいの黒いソファに腰を下ろすと、ふかふかで後ろに倒れそうになった。
慌てて体勢を直そうとすと、院長がフッと笑うから、笑い方が春多くんと似ていて少しドキリとした。
「君も会ったんだろう?北川教授の孫娘と」
「あ、愛奈さん、ですか?」
「今までで北川教授に強くお願いされていて。名目上、彼の肩を持たなければならなかったんだけど、彼女も春多を諦めたからね。それに、恋愛について俺がどうこう言える立場ではないからね」
なんて、院長が"ははは"と笑うから、"そうですね"と言いたいけど口がさけても言えないから、唇をぐっと閉じた。
「春多についても、最近は顔を合わせて話す事が増えたんだ。今までで、俺の方から呼び出す事はあっても、春多から連絡くることはあまり無かったんだよ」
(※一応の結婚報告、車貸して、お金結構使うからとかの事務的連絡)
「……」
「春多をよろしく頼むよ」
「え、あ……こちらこそ。よろしくお願いします」
院長先生が頭を下げるから、私も急いで頭を深く下げた。