俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
腕組をして威圧的な態度を取る宗一郎さんが、首を横に振ってゆっくりと言葉を続けていく。
「お前に持たせているカードもあまり使っていないようだが……。女性というのは記念日や約束を大切にする傾向にあるんだからな」
「…………」
「どうせお前のことだから、何も考えていないのだろう」
「…………」
確かに、プロポーズの事は全く考えていなかった。でも、俺の事を分かりきった顔したこいつの前で素直に頷くことは絶対にしない。
そうやって何人もの女を誑《たぶら》かして騙してきたんだろうし。
「雰囲気のいい場所で食事をして、婚約指輪を渡して、プロポーズをしたらどうだ?」
「……余計なお世話です。失礼しました」
*****
大学に戻る途中でポケットに入れたスマホがブブッと振動で揺れた。
────────────────
(河本宗一郎)
おすすめレストラン
http://www.~~~
http://www.~~~
http://www.~~~
ジュエリー店舗
http://www.~~~
http://www.~~~
─────────────────
画面に視線を落とすと、おすすめレストランと宝石店のURLがいくつか目に入る。
「あぁ?絶対に参考にしねーし」
でも、思わずそのURLを開いてその店を選んでしまったのは、
「今日はプロポーズ記念だね!凄く嬉しい!春多くん格好いい!大好き!!」なんて、珠里さんが驚く顔と喜ぶ顔が見たかったから──。
──春多、プロポーズ考える──