俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
大学近くであった事故が春多の母親だった、という事実を知ったのは少し後の事。
それから、春多に色々な噂が付きまとった。院長の孫だとか、愛人の息子とか、遠い親戚とか──。春多は周りの奴等に「家庭の事情」とか「秘密だしー」としか言わなかった。
大学2年に上がったと同時に"川田春多"が"河本春多"になった。その頃の噂は"院長の孫"で落ち着いていたけど、前に春多が言っていた"超金持ち"は俺等の通う大学病院の院長で、春多はその愛人の息子なのだろうと察するしか無かった。
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そして、俺と春多の腐れ縁も何年も続いていく。
「なぁ、和泉。これとこれどっちがいいと思う?」
昼休み。なにやらスマホの画面に真剣な表情で視線を落とす春多がいた。
「あー?何が……はぁっ!!?」
画面に表示されていたのは、指輪だった。
しかもただの指輪じゃない。学生じゃ買えないような金額、何百、何十万もするものばかりで目を疑った。
「プロポーズするんだけど、婚約指輪っての買おうと思って」
春多はいつの間にか出来ていた彼女を妊娠させていて結婚するらしいけど、おいおい金銭感覚おかしいだろう。
普段、金遣い荒い奴じゃない筈なのに。
「高過ぎじゃねぇ?つーか、そんな金あんの??」
「うん、使っていーって言うから(※使っていいとは言われてない)」