俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
"誰に使っていーって言われたんだよ??"とは突っ込みにくい。春多は俺が聞かないのを分かってて、言ってくるから苛立つな。
「ほら、珠里さんはそんな物欲ないし、ブランド物に興味ないんだけどさ。指輪位ちゃんとしたのあげたいじゃん?」
「へー……ちゃんとし過ぎじゃねぇ?」
「ほら、このリボンの形したの珠里さんに似合いそうだよな」
一緒にスマホの画面に視線を落とすと、指輪の写真の下に925.000円と金額が表示されている。(※まだ働いてない大学生)
「こんなの渡してプロポーズしたら、絶対に感動して泣くと思うんだよなー。珠里さん俺のこと凄っげ好きだからさ」
「………うわ、でたよ」
婚約指輪の相場とか知らないけど。マジかよ、こいつ。呆れ半分で春多に目を向けた。
ニヤニヤ目を細めて、愛おしいものでも見るようにスマホを見ているから驚いた。
今まで、こんな春多と直面した事があっただろうか。
成績優秀。レポート、実習評価ともにAAA。
ムカつく時もあるけど、ずっと身近で過ごしてきたんだ。こいつの努力はよく知っている。
春多の母親が事故にあってから5年──。
一度も弱音を吐くことは無かった。
「春多、お前。幸せになれよ」
春多の肩に腕を回してそう口にすれば、
「当たり前だろ」
と自信たっぷりにニヤーっと口元を緩めるから、コイツ全然変わってねーじゃんと俺まで嬉しくなった。
──春多、プロポーズ考える.その2──