俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
珠里と春多の日常
おばあちゃんが退院した次の日。
春多くんと2人。大学のカフェテラスでご飯を食べている時だった──。
「珠里、春多くんのお父さんが病院の院長先生だって聞いてなかったんぞ!」
どうも、退院する時に突然"春多がお世話になってます"的な挨拶をされたとかで。お父さんからのお怒りの電話がかかってきた。
「あっ、実はそうなんだけど。ごめんね言うタイミングを逃しちゃったっていうか…」
「全くお前は、妊娠した時だってすぐに報告もしないで……」
昔は何も口出してこなかったんだけどなー。
くどくど続くお父さんの後ろから、「もういーじゃない」とお母さんの宥める言葉、おばあちゃんの笑い声も聞こえてくる。
確かに伝えるべきだったんだろうけど。
こっちだって色々あったし、私なりに春多くんの立場も考えて報告しようとしてたところだっのに。
「えー。だって……」
「もしもし、お義父さん?」
ブーと頬を膨らませたところで、すぐ横の席に座っていた春多くんが私のスマホをひょいと取り上げた。
「驚かせてすみませんでした。てっきり珠里さんが伝えているものだと思って」
「ちょっと、勝手に……」
「いえ、珠里さんは父や僕の立場を考え、お義父さん達への報告を悩まれていたのだと思います」