俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「和泉……」
「和泉くんっ」
私と春多くんの和泉くんを呼ぶ声が重なる。
彼は呆れたように笑いながら、珈琲カップをテーブル上に置いて向かいの椅子に腰かけた。
「大学デート。お2人さんで流行ってるの?」
「んー、珠里さんが大学の学食で食べたいって言うからさ」
「え、だって憧れるじゃん。大学のカフェテラスって。私、専門学校で学食無かったし、安くて量も多くて美味いし」
「確かに、ここのご飯学生に優しい値段で美味しいで…」
「珠里さんは食べ過ぎ注意だからな。体重オーバーしてるから」
和泉くんが私に顔を向けると、明らかにムッとした春多くんが彼の言葉を途中で遮った。
そして、私のチキンを1つ摘まんでパクっと自身の口に入れてしまう。
「あー、また勝手に!体重、体重って。春多くん、いつも私の分まで食べちゃうじゃん。ズルいよ!」
「俺は珠里さんとお腹の子を思ってるんだよ」
そう言って私の持ってるフォークまで口に持ってく始末。
「あぁっ、今食べようとしたのに!」
「もっと食べたい。あーんして」
「……ちょっ、離れてってば!」
春多くんが私の腰に手を回して距離を縮めてくるから、目の前の和泉くんの冷ややかな視線が痛く突き刺さる。