俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
式を挙げるか、挙げないか
「鴨ちゃん、結婚式ってどうするの?」
「えっ!?」
昼休み。休憩室の椅子に座る真木ちゃんが、両手を合わせながら目を輝かせた。
「いーなぁ!ハワイとか海外で挙げる予定とか?」
「あー、どうだろう?」
「マタニティーでやるの?それとも産まれて落ち着いてから挙げるの?」
結婚式かぁ。お金もかかるし、あんまり考えてなかったけど。
真木ちゃんが嬉しそうな顔をして、スマホで検索したマタニティードレス写真とか見せてくる。画面にはお腹の膨らんだ女の人がウェディングドレスを身に纏う画像が並んでいるから。
「わ、可愛いね!」
ちょっとだけ、その気になってしまったのは事実。
***
「ふーん。珠里さんは式挙げたいの?」
マンションに帰って一目散に結婚式の話を持ち出すと、春多くんは興味なさそうに私に目を向けた。
「盛大じゃなくて。ほら、家族とか仲良い友達とかだけで、小さくやってもいーかなって思ったんだけど……」
「んー。俺の親、どっちも呼べないけど?」
「……!?」
そうだった。春多くんのお母さんは施設にいるし、院長先生《お父さん》だってよく知らないけど妻子がいるんだ。
真木ちゃん情報だと、今は違う病院に勤務してるみたいだけど。
「それにさ、父親の前でキスするのやだよ」
「それ春多くんが言うの?」