俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
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「すっげー、感じてるじゃん?あ、こっちも気持ちぃ?」
記憶は曖昧で朧気だけど。
暗がりのこの部屋で、知らない男の人と裸で汗だくになるまで抱き合った。
「ベッドいかなくていーの?」
「いいっ、ここで、いーの」
何度も落とされる甘いキスに、身体の輪郭が分からなくなるまで全身を愛撫でされていく。
カーテンの隙間から覗く月明かり。男の人にしては白い肌。細い腰。仕草は乱暴なのに、頭を撫でる手と声のトーンはやけに優しかった。
私なんて、どうなっても良かった。
汗で濡れた背中にしがみついて、お互いの歯切れの悪い息が混じりあって。何度も何度も、この男の子を感じた。
寂しくて、惨めで堪らなくて、誰でもいいから側にいて欲しかった夜。
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あの夜の相手は本当にこの子なのだろうか。
顔さえ覚えていなかったのに(黒リュックしか)。
断片的とはいえ、なんで今思い出すかな。
男の子の胸の中。泣いている子供をあやすように、背中をポンポンと軽く叩かれる。人の体温と心臓の音が規則的に伝わって、少しだけ心が落ち着いていく。
この子は口が悪いだけで良い人なんじゃないだろうか。そう思ったのに──。
「俺、あん時さ。興奮しすぎてつけなかったかも」