俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「こっちの部屋が俺のスペースと寝室」
「あ……、あぁ、うん」
立派で大きなダブルベッドに動揺したなんて、悟られないようにしなきゃ。自身の頬を両手でバシバシと叩いてると、不審そうな目で見られた。
「あと、あの部屋は開けないで」
この子が最後の1部屋を指差して、そう口にする。
「何があるの?」
「……出るんだよ。あの部屋だけ」
「はぁ?嘘でしょ!?」
少し沈黙が続いて、目の前に立つ子が"プッ"と吹き出した。
「冗談。あんたすぐ騙されそー、気を付けろよ」
「だって、幽霊とか苦手なんだもん」
「見えるタイプ?」
「見えないし、感じないけど、苦手なの」
「ふはっ、俺も見えないけどさー」
からかわれたのだと気が付いて、ムッとしていれば春多くんがにっこり笑って言葉を続けていく。
「ただの前の同居人の部屋だよ」
「え、同居人って、戻ってくるの?私いて平気?」
「俺、そんな物欲ねーから、部屋余ってるし面倒だからそのままにしちゃうんだよね。だから、開けないでっつーか鍵かかってるけど」
「………」
肝心の"同居人"の返事がないんだけど、住まわして貰うのだから。余計な詮索はしない方がいいのか迷う。
「なぁ、今日は疲れただろ?ただでさえ、妊娠中は疲れやすいんだから」
「え、あ……うん」
「もう、風呂入って休んだら?」