俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「あの、お風呂ありがとう……」
「使い方、大丈夫だった?」
トントンとノックして春多くんのいる部屋の扉を開けた。
本が積み重なる机。ノートパソコンに手を置いたままの男の子が、顔だけこっちに向ける。
こいつ、勉強する時 眼鏡かけるんだ。
「う、うん、大丈夫。タオルもありがとう。えと、ドライヤーも使わせて貰っちゃって……」
浴室は普通だった。大きくて立派だったけど、他の部屋よりは使用感があって安心した。
けど、この部屋の奥にある立派で大きなベッドを意識しないではいられない。
「いーよ、先寝てて。俺、臨床実習の……学校のレポート終わさなきゃなんねーし」
「…………」
同じベッドで一緒に寝るなんていうから、気にしちゃっただけで、別にこんな奴なんてどうでもいいし。
「じゃぁ、お先に!」
ズカズカと春多くんの横を通りすぎて、一直線でベッドに向かい布団に潜り込んだ。
一応、スマホの連絡先は交換したけど。こんなものなのかな。もう少し、お互いを知る歩み寄りがあってもいいのに。
もちろん、妊娠初期に何かするワケにいかないけど。随分と、あっさりしていて逆にこの先の生活が不安になる。
──堕胎してくれないか?
嫌だ、あんなの思い出したくない。目をギュッと瞑り唇を噛み締めて、自分のお腹に手を当てて体を丸めた。
柔らかいベッド、ふかふかで温かい布団。
今日の疲れがどっと出て急激に体が重くなって、いつの間にか眠りについていた。