俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
それから、看護部長にも妊娠を報告した。事務長とも相談して、仕事はパートに切り替えることになった。
俊也さんとは、1度も連絡をとっていない。電話もLINEも無視した状態で、彼が病棟診察の日はなるべく病棟外での仕事に出て、1人にならないようにしていた。
私の事気にしてるみたいだけど、流石に皆の前では声かけられなみたい。
それにきっと、彼は私の心配じゃなくて、子供をどうするか心配しているだけだから──。
「どこ行くの?」
その日は珍しく、私も春多くんも休みの日だった。
「え、産婦人科だけど。心拍確認できるか1週間後に来てくださいって言われてたから」
「んじゃ、俺も行く。帰りに役所も寄ろ?」
「あ、うん」
「準備するから、ちょっと待って」
珍しい、本当に珍しい。
春多くんとは、"同棲"、"新婚"というより、同じ空間に住んでいるただの"同居人"という感じだった。
「お待たせ。行こっか」
「うん」
部屋から出てきた春多くんは、白のオーバーサイズのトレーナーに、黒のショルダーバックを前に背負っている。やっぱり若いなーと、思わずにはいられない。
毎日同じベッドで寝ていても、本当にびっくりするほど何もないけど。
一緒に出掛るなんて、はじめてだし。これってデートになるのかな?