俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「ちゃんと心臓も動いて、赤ちゃんすくすく育ってますね。ママも赤ちゃんも頑張ってるから一緒にサポートしてあげて下さいね、パパ!」
診察室に明るくてハキハキした女医さんの声が響いた。
待合室に移動して、春多くんと2人並んでソファに腰かける。
1週間前、場違いだと感じたその場所。
惨めだと感じたあの時とは違う。クリニックの雰囲気は同じなのに、隣にこの子がいてくれるだけ誇らしく感じる。
でも、私でさえまだ"ママ"の実感ないのに、"パパ"と呼ばれてどう思ったのだろうか。
春多くんに視線を向けると、すぐに気付かれてパチリと目が合った。
「……何?」
「な、なんでもないよ」
「あー……、パパだって全然実感ねーな」
「だよね、私も」
この子の戸惑うような表情、言葉にこっちまでくすぐったくなって思わず口元が緩む。
「あのさ、子供産まれても、あんまかまってやれないかも」
「……え?」
「金だけ入れてってのはやりたくねーけど。卒業して国試通ってもさ。2年はレジデントで回るから忙しいし、その後だってどうなるか分からねーし」
「うん?」
よく分からないけど、研修医期間の話かな?
「結果、あんたと子供のこと放っておく形になるかも。そこは許して?」
産まれた後のことなんて、全く想像できないし、考えたことも無かった。
なのにこの子は考えてくれてたんだ。