俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~



「うわぁ、旦那さん素敵な方ですね!お仕事何してるんですか?」


声が少し震えた。顔はちゃんと笑えてるだろうか。



「お医者さんなんです。といってもまだ独立してなくて、大学病院で働いているんです。珠里さんのご主人は?」




「わ、たしは……わた…」

「珠里さん?どうしました?気分悪いんですか?」


息が苦しい。胸が痛い。その場にしゃがみ込んだ。
"お昼ごはん体に合わなかったかしら?"なんて心配そうに慌てて覗き込んでくるミチさんの顔が見られない。




「あの、わ、たし……ごめんなさい。帰ります」

「え、大丈夫ですか?」

「はい、突然、ごめんなさいごめんなさい……」


急いで立ち上がって、部屋を出る。リビングに置いたままのバックを手に持った。

そのまま、玄関に向かって靴を履いて逃げるように後にすると、背後から「また遊びに来てくださいね」というミチさんの声が聞こえてきた。


目に焼き付いた、お似合いで幸せそうな2人の写真。あんなの見るんじゃなかった。

(うち)に帰らなくちゃ。ここじゃないとこへ逃げなきゃ。早く、早く──。


エレベーターまで走って、ボタンを押そうとした時、丁度その扉が開いて。






「珠里?こんなところで何をやってるんだ?」


私の目に飛び込んできたのは、俊也さんだった。


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