俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「しゅ、んやさん……」
「一体、何故ここに?まさか、うちを訪ねて来たのか?」
「えっと、違うんです。これは偶然で、本当に知らなくて……」
しどろもどろの言葉はまるで言い訳のよう。頭の中がぐるぐると回って何から説明していいか整理がつかない。
どうしよう。これじゃまるで──、彼の家まで押し掛けてきた女みたい。
「まさか、妻がお友達が遊びにくると言っていたのは、君のことだったのか?」
「……」
「もしかしたら妻は……いや、君の体は大丈夫かい?」
「え?」
眉を下げて顔を歪ませた彼が、大きな息を吐いた。次の瞬間、私の腕を引いて彼に抱きしめられていた。
煙草とコーヒーの香りが混じった香り。
大好きだった俊也さんの胸の中。
「珠里……、ちゃんと話がしたかった」
「……え?」
「ちゃんと話がしたかったんだ。子供の事も含めてきちんと話をするべきだと思っていた」
──堕胎してくれないか?
彼を避けていたのは私の方だ。
スマホも拒否して、病院でも彼が話しかけられないように常に誰かと動いていた。
もう、あんな胸を引き裂かれるような悲しい思いをするのは嫌だから。
「わ、私はもう話なんて無い!子供は、あなたの子じゃありません!俊也さんなんかの子供じゃない!!」