俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「珠里、強がらなくていいから」
「強がってなんかいません。父親は別にいるから、もう話しかけないで下さい!私のことは放っておいて!!」
彼の胸に手を当てて自身の腕を伸ばすと、俊也さんとの間に距離ができる。
「他に男がいたのか?」
「ち、がいます」
ぐっと握った拳が震えた。
もう、大丈夫だと思っていた。なのに、こんなにもまだ胸が痛いなんて。一瞬でも疑われたのが、全てを否定されたように感じて、泣きそうになった。
「あのときは、君の気持ちを考えずにとても酷いことを言ってしまった。申し訳なかった」
「……っ、」
「俺の子供として、やり直さないか?」
「…………え?」
「妻とは別れる。だから、俺の子として産んで欲しい。時間はかかるかもしれない。でも、必ず君を迎えに行くから」
目の前の俊也さんが、フッと口元を緩めて優しく私の頬に触れる。
「な、にを言っているんですか!?都合のいいこと言わないで下さい!私がどれだけ、苦しんだと……酷いです、な、何で、平気でそんなこと言えるんですか?」
マンションの廊下に私の叫び声が響き渡る。近所迷惑だとか、そんなことを考える余裕なんてなかった。
「それに、奥さん妊娠してるじゃないですか!?」
「は?妻は妊娠なんてしていないが」