俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~



「フヨーコージョ?だから何よ!関係あるの?」

「俺、今収入ゼロだから、親の保険のおまけになってんだよ。そんな状態で籍入れたら即バレるし。卒業まであと1年きってるのに、いきなり国保に切りかえるのも変だろ?」


何で、バレたら駄目なんだろう。

どうしよう。よく意味分からないのに、春多くんが上から見下げてくるから、恥ずかしくて胸が凄くドキドキする。



「それに、俺、あんたに扶養されんのも絶対やだし」

「……で、でもっ。毎日、(おんな)じベッドで寝てても何も手ぇ出さないのって、おかしいじゃん!」

「違くてさぁ。ベッドでキスなんかしたら、ヤバいだろ?」

「何がヤバいのよ?妊娠してお腹ふっくらしてきたから、私の体なんか興奮しないんでしょ?」

「さすがに妊娠初期で……」
「俊也さんは私のこと"愛してる"って言ってくれたのに!!」



"しまった"と慌てた時にはもう既に遅くて──、



「なんで、今、香川の話が出てくんの?」


春多くんの声が1トーン下がったのが分かる。
私の手首を掴むこの子の手の力が強くなって、明らかにイラッとした表情を見せた。



「……ごめんなさい」

「それ、何の謝罪?」

「だって、えっと、俊也さんと会った事、春多くんに話してなかったから」

「で、俺と別れたいってこと?」


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