俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
体がふわふわする。頭がくらくらする。
どの位、飲んだだろうか。
冷蔵庫のアルコールが尽きて、近くのコンビニへ行こうとアパートを出た。
日は完全に落ちて、辺りは真っ暗だ。小さな街灯と路を走る車のライト、遠くにみえる病院の窓の明かりが歩道を照らす。
春なのに冷たい風が吹いて、泣き腫らした目蓋に心地よさを感じた。
「悲しいなー、悲しいなー、ううっ、……寂しいよぉ」
よろよろと、塀をつたいながら歩いていると"むにゅっ"と何かを踏んづけた。
足元に視線を向けると、黒い大きなリュックだった。正確にいうと誰かが背負っているリュックサックで、その誰かが歩道に寝転がっているから驚いた。
「………え?…人?……し、死体???」
回らない頭でその場にペタンとしゃがみ込む。ヤバイ、踏んづけて殺しちゃった?
「ふはは、そんなわけないかー。生きてますかー?」
「………んー」
「こんなとこで、寝てたら自転車に轢かれますよー」
大きく揺すると、その人は体を起こして今度は塀に寄りかかって座り込む。
視界はぼんやりしてるけど、結構、若めの男の人だという事だけは分かった。
「ねぇねぇ、風邪ひいちゃうよー」
「……うーん、」
「ねぇ、帰らないの?終バス逃しちゃったー?」
「……」
「うち、来る?」