俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
ギュッと抱き締められるこの子の腕の中。トクントクンと心臓の規則正しい音が私の心を落ち着かせる。
泣き過ぎて頭が痛くて、喉がカラカラして、擦り過ぎた瞼は絶対に腫れているんだろうな。
「でさ、正真正銘 俺の子供ってのマジ?」
突然、春多くんが私の肩に手を置いて、少し距離が出来るからバチッと目が合った。額と額をつけてぐりぐりとしてくるから、顔が近過ぎて、急に心臓が落ち着かなくなる。
「わ!ご、ごめん、本当は嘘。だ、だって、私、それぐらいしか思い付かなくて…」
「はぁ?嘘かよ。なんかショックなんだけど、(小声)」
「……え、何か言った?」
「別に……。よし、分かった。その嘘、一緒に墓場まで持っていってやるよ」
フッと笑うその顔に、何度も助けられた。
少し意地悪な時もあるけど、優し過ぎるよ。
「ありがとう。凄く嬉しい。でも、いいよ。無理しなくて」
「あぁ?無理って…」
「私、知ってるよ?春多くんに婚約者がいるのも。凄く綺麗で優秀な人なんでしょ?」
「いや、違っ……、なんで…」
「お腹の子供を認知してくれて凄く心強かったし、嬉しかった。うん、子供が小さいうちは生活とかお世話になっちゃうだろうけど。片親制度とかあるし、ちゃんと自立してみせるから」
「あんた、何言ってんの?」
「だから、もし本当に好きな人ができたら別れてあげるね!」
「なんだよ、それ。俺はっ、あんたの事が──」