俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「こんにちは、は、じ、め、ま、し、て」
「えっ??」
仕事が終わってマンションにつくと、エントランスで大きな帽子とサングラを身に付ける女の人に声をかけられる。
キョロキョロと辺りを見渡しても、私しかいない。もしかして私に話しかけてるのかな。
「あの、私ですか……?」
「そうよ、あなたが鴨田珠里ちゃんよね?」
凄い美人な女の人がソファに座ったまま、サングラスをずらしてニコッと上品な笑みを浮かべる。なに、この芸能人みたいな仕草。この人、まさか女優??
こんなお金持ちそうで、上品で、エレガントな知り合いいたっけ?と、頭がこんがらがっていく。
「なんで私の事、知ってるんですか?」
「あっ、ごめんね、驚かせちゃったかな?私、春くんの姉の……愛奈っていうの」
「えぇっ、春多くんのお姉さん?」
「夏休みだから戻ってきたのに、春くんと全然連絡取れなくてぇ。もう暑過ぎだし、お家の中に上げて貰えるかしら?」
「うわー、どうりで綺麗な人だと思った!いや、思いました……」
「うふふ、ありがとう」
ひぇぇ、春多くんにお姉さんがいたなんて知らなかった。しかも、こんなハリウッド映画に出てきそうな。
でも、まさか。
この後、大学から帰ってくる春多くんに怒鳴られる事になるなんて想像もしなかった。