俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
「はぁ、なんとなく理解した。珠里さん騙して人の家に侵入しやがって。早く出てけよ」
春多くんが右手で顔を覆って、大きな溜め息をつく。もちろん、反対の手は私を抱き寄せたまま。
「えー、嫌よ。春くんのお家はじめて入ったのよ?もう2度と入れないかもしれないじゃない。今日はここに泊まってくし、珠里ちゃんも良いって言ったもの」
「………え、お姉さんじゃないんですか?」
2人のやり取りを交互に見てキョトンと首を傾げると、愛奈さんがフッと上品な笑みを浮かべ、私が出した紅茶を飲みながら口を開いた。
「え、やっと気づいたの?珠里ちゃん、処理能力が遅すぎよ?本当に河本さんの言う通りね」
「アイツが手回したのか?」
「あなたじゃー、生物進化論的に春くんの遺伝子を残す女性として相応《ふさわ》しくないわ」
「愛奈。妊娠中はホルモンのバランスが崩れて注意力が落ちるんだよ。文献でも証明されてるだろ。注意散漫、集中力、情報処理が落ちるのは仕方ねーの」
「私だって春くんの相手に細かい文句言いたくないのよ?ただ、私よりずぅっっと優秀な女性じゃないと困るのよ。こんな頭悪そうな脳カラの子供っぽい童顔な…」
「お前と違って見た目が若いんだよ。俺の珠里さんが羨ましいからってディスんな!」
──すっげー綺麗な婚約者。会ったことないっすか?
いつだっか、春多くんの友達の和泉くんが言っていた言葉を思い出した。
「もしかして、春多くんの婚約者??」