俺の子でいいよ。~不倫関係にある勤務先の医者との子か、一夜だけ関係を持った彼との子か分からない~
***
「ねぇ、仕事終わりなの?どこ行くのかしら?」
「レディースクリニックです。検診の日なんですよ」
今日は4ヶ月検診の予約日。
半休で仕事を上がり、バスに乗り込んだ。
もちろん、愛奈さんが私の後ろを金魚のフンのようについてくる。
「暑ーい、汗だらだら。タクシー使えばいいのにぃ」
「高いじゃないですか?」
当たり前のように"タクシー"というから、愛奈さんもお金持ちなのだろう。
車内の隣のシートに座って、扇子で自身の顔を扇ぐ彼女を見て思う。
「ねぇねぇ。どうして、ケアワーカーになったのかしら?」
「別にいーじゃないですか。私にまとわりついても、春多くんとは別れないし、遺伝子提供もしませんよ!」
「あらあら。この間の事、怒ってるんだぁ?ふふっ、ごめんなさい」
なんて、大きな目をパチパチとさせて覗き込んでくるから、彼女の美貌に一瞬見惚れてしまった。
色素の薄い長い髪を耳にかかると白くて細い首が見えて、同性でも思わず目を奪われてしまう。
綺麗な人だな。容姿で勝ち目なんかない。
きっと、凄く頭が良くて知識も半端ないんだろうな。
本来なら、こんな優秀な人が春多くんに合っているのかもしれない。
「怒るのは当たり前です!て、一体どこまでついてくるんですか……?」
でも、物じゃないし、あの子を譲ることなんて出来ない。