明日のキミは。
明日の先生も。(side みく)

 チャイムにしようかな。
 でも、もう合鍵ももらってるし、合鍵で入る方がいい? これから自分もここに住むわけだし……。

 時間はまだ朝の7時。ここは、大学の最寄り駅の駅前に建つマンション。2401号室の玄関ドア前。
 朝の冷えた空気が全身に気持ちよく通って、さらに目がパチッと冴える。

 私は、右手に持つ重いビニール袋を見てふふっと笑った。


 そうだ、やっぱり合鍵で入ってみよう。
 そう決めて鞄から鍵を取り出すと、そっと鍵を開けて、小さな声で「失礼しまーす」と言ってみる。まるでゼミの部屋に入る時みたい。

 返事なんて期待してなかったのに、すっかりスーツに着替えた久我龍馬先生が出てきて、

「あぁ、みくか。おはよう」

と言ったものだから、私はガッカリした。

 普段だったら、先生の顔を見ただけで嬉しくなって気分が上がるのに、心底ガッカリしたのだ。
< 1 / 24 >

この作品をシェア

pagetop