明日のキミは。

 私が一通り笑い終えると、先生はまた口を開く。

「それで、明日の挙式や引っ越しで必要なことや気になってることはもう他にないか?」
「先生が面倒なこともほとんど引き受けてくれたから、もうありません」
「そうか」

 本当に久我先生は漏れや抜けがない。
 私は人生初のブライダルエステを楽しんだり、衣装選びを楽しんだり、友だちに会ったり、楽しい部分だけやっていたように思う。書類関係や手続きで必要なところは、先生が大抵やってくれていて、私は先生に言われた通りに書いたり、ハンコを押したりするだけだったから不安なことは何もなかったのだ。

「ほんと、先生って手際が良いですよね」
「癖みたいなものだ。エラーの可能性をつぶしておかないと落ち着かないというだけで」
「エラー?」
「どの研究分野でも何かを成し遂げようと思えば、大体何度もシミュレーションするだろ。そのうち出てくるエラーをつぶしていくことで完成形に近づけていくんだ」

 先生は、結婚の準備も研究と同じように考えているのだろうか。
 そう思って笑ってしまう。先生らしい、としか言いようがない。
< 10 / 24 >

この作品をシェア

pagetop