明日のキミは。
それからまた少しして、小田桐が学会の担当になった時、たまたまスタッフの学生が三人急に欠席になったために急遽彼女を連れてきた。
新しい場所に青くなりながらも懸命に働いている彼女を見て、やっぱりこれが『誰かを好きになる』と言うことなんだとやけに納得した。
懇親会の後、会場に残り、最後の点検をしていた彼女に声をかける。
彼女は驚いた顔をした後、赤い顔をして下を向いた。
『ど、どうされたんですか』
『忘れ物だ、万年筆なんだが』
そう言ってみたが、わざと忘れたものだ。
彼女は慌てて探してくれて、すぐに見つかった。
これからどうしようかと考えていたところで、彼女が万年筆を渡そうとしてバランスを崩し自分にのしかかる形になってしまった。
もちろん、誘っているのではないことは分かっていた。