明日のキミは。

　しかし、できるだけ平静な表情を装って「おはようございます」と言ってみた。
　先生はそんな私を見て、不思議そうに首を傾げた。

「どうした？　何か様子が変だな」
「別になんでもないです」
「言ってみなさい」

　怒っているわけでもない学生に問うような口調に、私は口を開く。

「一度くらい、私が起こしてみたかっただけです。先生の寝顔も見てみたかったし」

　理由を言葉にしてみると、その理由があまりにも稚拙で恥ずかしいものだったことに自分でも気づいてしまって顔が赤くなる。

　また子どもっぽいと思われたかな。
　15歳も違うんだから、思われて当然だけど……。

　でも、やっぱり一度くらいは起こしてみたい。
　公私ともに完璧な久我先生が無防備に眠る姿は、ただの一度も見ていない。