月下双酌 ─花見帰りに月の精と運命の出会いをしてしまいました─
「こうして、また会えてよかった」

 ぽつりと暗月が呟く。

「お前が、私を呼んでくれた」

 そしてもう一度、指先を甘噛みされた。
 右手の人差し指。爪半月(そうはんげつ)があった場所。

「返さないでね」

 手を伸ばし、暗月の頬に触れる。

「私の爪半月、ずっと暗月が持っていて。一生、離さないでね」

 暗月が顔を上げ、真っ直ぐ私を見つめると、ふっと笑う。

「離さない。そう宣言しただろう?」

 その艶やかな微笑みに、ああ、やっぱり美人さんだなぁ。と思った。


 その後、着物を脱いだ暗月と裸のまま、もつれるように寝台に倒れ込み、二人で思う存分抱きしめ合った。
 体の隅から隅まで触れられ、舐められ、刺激され、官能で全ての細胞が生まれ変わった様になる。
 とろとろ、どころじゃない、こぷっと愛液もこぼれ出し、早く暗月が侵入してくれないかと待っている。すっかり出来上がってしまった私は、鼻にかかった甘ったれた声で、気がつくと暗月にねだっていた。

「暗月。早く、来て」

 そんな私を足の間から見上げながら、彼は微笑んでいる。

「そんな急くな。もっと愉しませてくれ」

 そしてつつっと膝の裏側から鼠径部まで舌でなぞると、まるでクリームを舐めるかのように私のクリトリスを舐めてきた。ずっとじんじんと疼いていた場所。与えられる刺激に小さく悲鳴を上げる。時々、唇でやわやわと揉み込まれ、そこに意識を集中していると、指で膣の中のいいところを攻めてきた。
 快楽でどうにかなってしまいそう。何度も与えられる刺激のピークにすっかり喘ぎ声以外の言葉が出なくなったころ、暗月が顔を上げた。満足そうに口角を上げ、すっかりべたべたになった自分の唇を、私を見つめながら舐め上げる。舌がチラッと見えて、それがひどく煽情的で、またずくんとお腹の奥が疼いた。

「はいるぞ」

 ぎゅっと抱きしめられて、ちゅっと口付けられて、きゅっと右手の指と指を絡めて握られて、左手で腰を持ち上げられて、暗月がはいってきた。
 断続的な嬌声が自然と口から漏れてゆく。
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