月下双酌 ─花見帰りに月の精と運命の出会いをしてしまいました─
余話

おまけ1 :弥生ー花見にて

友人視点。
朔と暗月が出会う直前のことなど。

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 三月後半、金曜日の会社帰り、大学時代の女ばかり友人六人で集まった。目的は、花見。

 大きな公園なので場所取りが難しいかなと思ったけれど、シフト勤務で今日はお休みのメンバーが一人いて、さらにもう一人の主婦している子と二人で先に宴会始めてキープをしてくれていた。二十代も後半、メンバーの中には席取りしてくれた主婦の子以外にも、子育てに忙しいのもいる。この六人で数年ぶりに集まれたのは奇跡だ。

「ごめっ、遅れ、久しぶりっ……」

 SNSのメッセージで場所を確認しながら、人混みを避けつつ早足で集合場所に向かう。そんなことをしていたら、たどり着いた時にはすっかり息が切れてしまっていた。

「三年ぶりだねー。元気にやっていた?」

 うっかり残業に嵌った私が、最後の参加者。花見の宴はすっかり盛り上がり、ビニールシートの上、一升瓶を抱えた人物がみんなを見てニコニコしていた。今回の幹事だ。

(はじめ)!」

 久しぶりに見る彼女の姿に懐かしさが募る。荷物を放るようにビニールシートの上に置くと、私は彼女に向かって手を伸ばした。

「あんたこそ、元気にしてた?」

 そう言って、抱きしめる代わりに彼女のほっぺを摘むと、ぐにぐにと揉む。そうそうこの感触。朔だわ。

「ちょ、止めて! 化粧がはげる」

 無邪気に笑う彼女を見て、少し安心した。学生時代から、そして社会人となりたまに会うだけとなってからも変わらない、彼女の笑顔。

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