月下双酌 ─花見帰りに月の精と運命の出会いをしてしまいました─

ツマミ1 :卯月ー駄菓子

朔視点。
二回目の公園飲みでのこと。

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 暗月と不思議な出会いをしてから一ヶ月後。四月のある日、私は携帯アプリの月齢カレンダーをチェックすると、会社を出た。向かう先は自宅近所の公園。おっとその前に、コンビニにも寄らなくては。

 あれは夢だったのか、幻だったのか。思い出せば思い出すほど、現実味を失ってふわっとした記憶になってしまう。とりあえずコンビニでビール二本とツマミになりそうな駄菓子を買って、公園に来てはみたのだけれど……。

「暗月、いるー?」

 キョロキョロと辺りを見渡し、こっそりと伺うように呼びかけてみる。お目当の野良猫がいるか、探しに来たようなノリだ。

「居るぞ」
「ひゃ!」

 いきなり背後から声がしたのでびくりとする。小さく叫んで振り向いたら、暗月が立っていた。いつの間に?

「幽霊か、私は?」

 今まさに思ったことを言われてしまい、ついへらっと笑ってしまった。

「カテゴリー的には同じではないかと」

 とっさに言い返すと、暗月の眉がちょっと寄った。

「私は、ここにいる」
「うん、そうだね」

 なんだか機嫌が悪そうだ。どうしたんだろうとは思うけれど、まだ会って二回目の人の思考が読めるほど、私は聡い人間ではない。まあいいかと、エコバッグからビールを取り出して掲げて見せる。

「飲もうよ」

 暗月は私を真っ直ぐ見て何回か目を瞬かせると、気の抜けた表情で小さく笑った。

「そうだな」

 ちょっとは機嫌良くなったかな? 

 ベンチに座ると、ビールを渡す。暗月はビールのプルトップを開けると口をつけ、そのままグイッと行きそうになったので慌てて止めた。

「待った! 乾杯してからだよ」
「乾杯?」
「これしないと始められないでしょ」

 ビールの缶と缶をペコンとぶつける。

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