月下双酌 ─花見帰りに月の精と運命の出会いをしてしまいました─
「ごめんね、待たせちゃって。次の店、ここの近くだから」
そう言って私の肩に手をかけると、すっと彼らの視界から遠ざけてくれた。酔っ払い達はそれを見てやる気を削がれたようだ。
「なんだー、この後も決まってんじゃん」
「誰だよ、一人だって言ってたの」
酔っているせいか、声が大きい。ナンパ失敗の責任をお互いになすりつけ合うと、こちらを見ずに去って行った。って、ちょっと待ってよ。人誘っておいて最後の態度がそれって、ちょっと失礼じゃないの?
呆れて三人組の後ろ姿をしばし見送ると、気を取り直して横に立つ人に視線を移す。
「……ありがとうございます。助かりました」
ぺこりと頭を下げるとまた自動ドアが開いて、本日の主役が現れた。
「あれ? 佐藤さん、どうしたの」
「立花さん。……いえ、なんでも無いです」
花束を抱えてニコニコしている立花さんを見て、慌てて手を振る。こんな幸せそうな表情している主役に、自分の小さく苛立った話はしたくない。その気持ちは飯島さんも同じだった様で、さり気なく私の肩から手を外すと、立花さんに向き合った。
「二次会どうする? って話をしていたんだ。立花さんも、どう?」
「うわ、残念。今日はお迎えが来るんだよね」
照れた様にふふっと笑う。その様子に、参加メンバー全員がざわついた。
「もしかして、彼氏さん来るの」
「ええまあ、今日はお休みだからって。なかなかこういう場所に来ることも無いからって」
立花さんの結婚相手。所詮は会社での付き合いでしか無い私たちにとって、それは最大の私的情報だ。どんな人なのか気になってしまうし、やっぱり気分も盛り上がる。女性陣は興奮のまま叫び声を上げ、一気にこの場が盛り上がった。私もその輪の中に入りたい。が、立ち位置が悪かった。
「婚約者の人、来るんだ」
小さく呟く声がすぐ横から聞こえて、ピクリとする。
「どんな方なんでしょうね?」
なるべく当たり障り無く聞こえますようにと祈りつつ、淡々と言ってみた。
そう言って私の肩に手をかけると、すっと彼らの視界から遠ざけてくれた。酔っ払い達はそれを見てやる気を削がれたようだ。
「なんだー、この後も決まってんじゃん」
「誰だよ、一人だって言ってたの」
酔っているせいか、声が大きい。ナンパ失敗の責任をお互いになすりつけ合うと、こちらを見ずに去って行った。って、ちょっと待ってよ。人誘っておいて最後の態度がそれって、ちょっと失礼じゃないの?
呆れて三人組の後ろ姿をしばし見送ると、気を取り直して横に立つ人に視線を移す。
「……ありがとうございます。助かりました」
ぺこりと頭を下げるとまた自動ドアが開いて、本日の主役が現れた。
「あれ? 佐藤さん、どうしたの」
「立花さん。……いえ、なんでも無いです」
花束を抱えてニコニコしている立花さんを見て、慌てて手を振る。こんな幸せそうな表情している主役に、自分の小さく苛立った話はしたくない。その気持ちは飯島さんも同じだった様で、さり気なく私の肩から手を外すと、立花さんに向き合った。
「二次会どうする? って話をしていたんだ。立花さんも、どう?」
「うわ、残念。今日はお迎えが来るんだよね」
照れた様にふふっと笑う。その様子に、参加メンバー全員がざわついた。
「もしかして、彼氏さん来るの」
「ええまあ、今日はお休みだからって。なかなかこういう場所に来ることも無いからって」
立花さんの結婚相手。所詮は会社での付き合いでしか無い私たちにとって、それは最大の私的情報だ。どんな人なのか気になってしまうし、やっぱり気分も盛り上がる。女性陣は興奮のまま叫び声を上げ、一気にこの場が盛り上がった。私もその輪の中に入りたい。が、立ち位置が悪かった。
「婚約者の人、来るんだ」
小さく呟く声がすぐ横から聞こえて、ピクリとする。
「どんな方なんでしょうね?」
なるべく当たり障り無く聞こえますようにと祈りつつ、淡々と言ってみた。