君の気持ちだけが読めない
洗面所でねばねばした口周りを洗う。
ふと自分の顔が目に入る。
おでこ、鼻周りににきびだらけだ。
それを前髪がない私は顕わに出している。
隠せばいいじゃないかと言われることはよくある。
だが一度も前髪を作ってこなかった身としては、切らないことに執着してしまう。
鏡を見過ぎていたらしく、仕上げのリップを塗った母が、
「あら、自分の顔に見とれているのかしら」
そんな茶々を入れてくる。
またもや母と3秒目を合わせ、真意を確かめようとしたが、母は自分の顔にしか興味がないらしく、顔の角度を変えて、それはもう見とれていた。
当然私は、母のように見とれていたのではない。
逆にがっかりしたのだ。
自分はこんな顔だったということに。
朝起きたら顔がツルスベ肌になることを期待しない日はない。
だらだらと顔にケチをつけていては入学式に遅れてしまう。
そんなことでは、友達作りに意気込んでいる場合ではなくなる。
急いで自分の部屋にバッグを取りに行く。
椅子の上のピカピカのバッグを手に取ろうとした時、どぎついピンク色をした円盤のキーホルダーに驚いた。
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