最後に恋した一か月

 



***


――久しぶりに先輩とテニスしたいなぁ。



 家。

 ひとりでゆっくりしてたいのに。

 何故かあいつの声、思い出してる。


「テニスって、あのバーカ」


 男と女って。

 違うんだよ??


 確かに一年のときに、
 男子テニスの新入部員をめっためったにした思い出がある。

 うちの学校の恒例?みたいな感じで、女テニと男テニの交流があるから。

 その時、やけに悔しそうにしてたのが、あいつ。

 そして。

 あたしの実力を見て、目を輝かせていたのも、あいつ。


 だけどさ。


 今、きっと、浅田と向かい合って、
 コートの上で戦っても、


 きっと、あたしは負けてしまう。


 後から始めた浅田だけど、その成長スピードは早すぎて、

 あっという間に、あたしの手の届かないところまで進化してしまった。


 背が止まってしまったあたしと、
 今も成長している浅田。


 ……悔しいよね。


 そんなやつが、あんなにも単純に。


――久しぶりに先輩とテニスしたいなぁ。


 あんなこと、言うから。


 今のあたしの実力を、見たら。

 どう思うのかな??


 ガッカリするかな??

 そしたら……。



 もう、あたしなんて眼中になくなっちゃう??


 あたしは浅田がそばにいなくなるのを、想像して、


 ぞっとした。



 あー、だめだめ。

 どうして、こんなこと、考えちゃうんだろう。


 残りは一ヶ月しかない。


 最後、なんだ。


 こんな、シラケてちゃ、ダメダメだよ。

 あたし、しっかり!!

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