最後に恋した一か月
***
「はぁーっ、終わったぁ」
エンドロールがこれほど嬉しいことはなかった。
照明のついた映画館の中を、ひとびとがぞろぞろと出ていく。
浅田は立ち上がって伸びをした。
だけど、あたしは。
「先輩?」
「あ、うん、大丈夫」
立ち上がろうとして、よろめいてしまった。
「先輩っ!」
そんなあたしを浅田が支えてくれる。
「っ! 浅田っ」
「ごめん」
「え?」
なんで、あんたがそんなうなだれてるわけ??
「オレが誘ったのに」
いや、あたし。
この映画、観たかったのは、あたし!!
「それに……」
浅田は、耳まで真っ赤にしていた。
「手を握っていたくて、いつまでも先輩を付き合わせちゃったから……」
あ。
「ごめんなさい。本当は、先輩がとっくにこの映画見たくないって気がついていたのに……」
浅田。
あたしのこと、ちゃんと見てる。
のに。
ちょぉっと、おしいんだよねぇ。
「いいよ、そんなの」
「先輩?」
「好きな俳優さんが悲鳴あげてるとこ、見れたし」
それに。
きみと手を繋ぐってのが、こんなにも安心するんだって、知った。
浅田のいろんなとこ、知れたから。