最後に恋した一か月


***


「よかったなぁ、あと、一週間もない」


 放課後。

 あたしは教室でひとり。


 誰も待ってなんかいない。

 浅田はきっと、やってくると思う。

 あたしと一緒に、帰るために。


 だけど、あたしは浅田を待たない。

 ただ、なんとなく、居残っているだけなのだ。


 それにしても、本当に良かった。

 あと一週間であたしは卒業。


 そしたらもう、浅田には会えない。

 浅田はあたしの周囲から消え去るのだ。

 そしたら、きっとあたしは浅田を忘れる。


 浅田のキラキラした瞳も、

 やけに大きくなった背中も、

 本当は、かっこいい姿も、

 優しい声も、

 ずっーと、あたしを追いかけてきた、その存在も、

 ぜんぶ、ぜんぶ、忘れられる。


 あたしが浅田を思っていても、浅田は違うひとを思っているんだ。

 どんなに浅田に尊敬されていようと、あたしは……ッ!!


< 31 / 50 >

この作品をシェア

pagetop