最後に恋した一か月
***
「よかったなぁ、あと、一週間もない」
放課後。
あたしは教室でひとり。
誰も待ってなんかいない。
浅田はきっと、やってくると思う。
あたしと一緒に、帰るために。
だけど、あたしは浅田を待たない。
ただ、なんとなく、居残っているだけなのだ。
それにしても、本当に良かった。
あと一週間であたしは卒業。
そしたらもう、浅田には会えない。
浅田はあたしの周囲から消え去るのだ。
そしたら、きっとあたしは浅田を忘れる。
浅田のキラキラした瞳も、
やけに大きくなった背中も、
本当は、かっこいい姿も、
優しい声も、
ずっーと、あたしを追いかけてきた、その存在も、
ぜんぶ、ぜんぶ、忘れられる。
あたしが浅田を思っていても、浅田は違うひとを思っているんだ。
どんなに浅田に尊敬されていようと、あたしは……ッ!!