最後に恋した一か月
***
そんなこんなで。
卒業まで一ヶ月のあたしに、それを口実にして、金魚のフンみたいにくっついてくる年下男子(しかも完全にワンコ)。
昼休みにも、あたしのそばを離れない……んだけど。
「ねー、先輩」
「なんだよ、もー!」
「久しぶりに先輩とテニスしたいなぁ」
そんなに甘えてこられても。
「ばかなこと言ってないで、はやくお弁当食べないと授業、間に合わなくなるよ?」
「もー、先輩のイジワル」
「あたしがほんとにイジワルなら、あんたと飯なんて食べないんだからね~」
「そ、それは、困るっ!!」
「よーし、いいぞ、いいぞ、困れ困れ~」
屋上。
何故かこの日はあたしたち以外に誰もいなくて。
時折ふいてくる風が妙に温かくて。
「オレ、本当に困っちゃうよ?」
だから、その時はほんの少しだけ、切なく思ってしまった。
「は?」
ドキンと胸が鳴ったのを、隠して。
隣に座る浅田があたしのこと、やけに真剣に見つめてくるから、だ。
「だって、オレ、先輩のこと……」