元勇者は彼女を寵愛する
神父はヴァイスに縋るような目線を送り、予想通りのセリフを唱えた。
ヴァイスと旅をしていた時、幾度となく聞いた言葉。
誰もが勇者を見つけては、それいけと言わんばかりに助けを求めてくる。
勇者様は困っている人を放っとけない。
勇者様にお願いすればもう大丈夫。
みんなの憧れ。みんなの希望。みんなの勇者様。
確かに、私も小さい頃はみんなと同じ様に思っていた。
だけど、ヴァイスと旅をしていく中で、その事に違和感を感じ始めた。
ヴァイスだって、一人の人間に違いない。
過度な期待は重く負担に感じることだってある。戦いの中で命に関わるほど深い傷を負う事だって……。
それなのに勇者というだけで、まるで慈愛に満ち溢れた神様がいるかの様に、都合の良いように扱うのね。
本当、みんな自分の事しか考えてないんだから。
……それは私も同じだけど。
ヴァイスは黙ったまま動かない。
神父はヴァイスの反応を待つことなく、話を続けた。
「この街から少し離れた森の中に洞窟があります。そこに生き残りの魔族が潜んでいるのではという噂があるのです。夜な夜な現れて女性や子供達を誘拐すると。事実、ここのところ行方不明者が多くて……。どうか、その洞窟へ行って実態を調査して頂きたいのです」
生き残りの魔族?魔王が倒されて魔族は消滅した筈じゃないの?
でも行方不明者が多いっていうのは気になるわね。
それに、もし本当に魔族が絡んでいるのだとしたら、確かに勇者の力が必要になる。
だけど――
今日はヴァイスがあの島から出られる特別な日。
せっかく羽を伸ばして、恋人らしいデートを楽しめると思ったのに。
……ああ、私ったら。
こんなこと考えちゃ駄目よ。目の前に困っている人がいるというのに!
邪念を振り払い、私はヴァイスをチラリと見上げた。
ヴァイスはどう思っているのだろう?
この人の要求に応えて、人助けに行きたい?
それとも、無視して私とデートを楽しむ?
そんなの決まってるわ。みんなの勇者様だもの。私が独り占めする訳には――
「リーチェ、君は僕にどうしてほしい?」
「え?」
突然言われたその言葉に、私はパチパチと瞬きしながらヴァイスを見上げた。
ヴァイスと旅をしていた時、幾度となく聞いた言葉。
誰もが勇者を見つけては、それいけと言わんばかりに助けを求めてくる。
勇者様は困っている人を放っとけない。
勇者様にお願いすればもう大丈夫。
みんなの憧れ。みんなの希望。みんなの勇者様。
確かに、私も小さい頃はみんなと同じ様に思っていた。
だけど、ヴァイスと旅をしていく中で、その事に違和感を感じ始めた。
ヴァイスだって、一人の人間に違いない。
過度な期待は重く負担に感じることだってある。戦いの中で命に関わるほど深い傷を負う事だって……。
それなのに勇者というだけで、まるで慈愛に満ち溢れた神様がいるかの様に、都合の良いように扱うのね。
本当、みんな自分の事しか考えてないんだから。
……それは私も同じだけど。
ヴァイスは黙ったまま動かない。
神父はヴァイスの反応を待つことなく、話を続けた。
「この街から少し離れた森の中に洞窟があります。そこに生き残りの魔族が潜んでいるのではという噂があるのです。夜な夜な現れて女性や子供達を誘拐すると。事実、ここのところ行方不明者が多くて……。どうか、その洞窟へ行って実態を調査して頂きたいのです」
生き残りの魔族?魔王が倒されて魔族は消滅した筈じゃないの?
でも行方不明者が多いっていうのは気になるわね。
それに、もし本当に魔族が絡んでいるのだとしたら、確かに勇者の力が必要になる。
だけど――
今日はヴァイスがあの島から出られる特別な日。
せっかく羽を伸ばして、恋人らしいデートを楽しめると思ったのに。
……ああ、私ったら。
こんなこと考えちゃ駄目よ。目の前に困っている人がいるというのに!
邪念を振り払い、私はヴァイスをチラリと見上げた。
ヴァイスはどう思っているのだろう?
この人の要求に応えて、人助けに行きたい?
それとも、無視して私とデートを楽しむ?
そんなの決まってるわ。みんなの勇者様だもの。私が独り占めする訳には――
「リーチェ、君は僕にどうしてほしい?」
「え?」
突然言われたその言葉に、私はパチパチと瞬きしながらヴァイスを見上げた。