元勇者は彼女を寵愛する
舞い上がる煙と塵で視界は覆われているけど、穴が開いた天井の下には人影が見えた。
その影がゆっくりと近付いてくる。ずるずると両手で何かを引きずりながら。
「あれ?おかしいな。君、前に会ったことがあるよね?なんでまた僕のリーチェと一緒にいるのかな?もしかして、リーチェの事が好きで付き纏っているのかなぁ?」
その声はいつものヴァイスと変わらない。柔らかく親しみやすい声色だ。
だけどそれに反して、この場の空気は完全に凍り付いている。時間でも止まったかの様に、誰も動けず固まったまま。この世の終わりかとでも思わせる様な表情で。
ヴァイスは引きずっていた何かを放り投げるように手放した。そこに横たわっているのは気絶している神父とあの少年だった。
「ひいぃぃぃ!!とんでもございません!!私と勇者様の愛する彼女様とは天と地ほどの身分の違いがありこんな私なんかがどんなに頑張ろうともとても手の届く存在ではございません!!どうかお許しください!!!金輪際、勇者様の彼女様には一切関わりません!!視界に一ミリも入りませんから!!」
男は床に頭を擦り付ける様にひれ伏せ、懇願する様に必死に声を絞り出している。
「それ、前にも聞いた気がするけどなぁ。まあいいや」
ヴァイスが指を鳴らすと、男を囲む刃は消え失せた。男は腰を抜かした様にその場にへたりこんだ。
っていうか、この状況は一体何?
この人は、本当に私が知ってるあのヴァイスなの?
ヴァイスはゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
その表情はいつもと変わらない笑顔……いや、顔はいつもの笑顔なんだけど、纏ってるオーラがなんだか黒いような……。前髪の黒髪も若干増えてる気がするのだけど?
その影がゆっくりと近付いてくる。ずるずると両手で何かを引きずりながら。
「あれ?おかしいな。君、前に会ったことがあるよね?なんでまた僕のリーチェと一緒にいるのかな?もしかして、リーチェの事が好きで付き纏っているのかなぁ?」
その声はいつものヴァイスと変わらない。柔らかく親しみやすい声色だ。
だけどそれに反して、この場の空気は完全に凍り付いている。時間でも止まったかの様に、誰も動けず固まったまま。この世の終わりかとでも思わせる様な表情で。
ヴァイスは引きずっていた何かを放り投げるように手放した。そこに横たわっているのは気絶している神父とあの少年だった。
「ひいぃぃぃ!!とんでもございません!!私と勇者様の愛する彼女様とは天と地ほどの身分の違いがありこんな私なんかがどんなに頑張ろうともとても手の届く存在ではございません!!どうかお許しください!!!金輪際、勇者様の彼女様には一切関わりません!!視界に一ミリも入りませんから!!」
男は床に頭を擦り付ける様にひれ伏せ、懇願する様に必死に声を絞り出している。
「それ、前にも聞いた気がするけどなぁ。まあいいや」
ヴァイスが指を鳴らすと、男を囲む刃は消え失せた。男は腰を抜かした様にその場にへたりこんだ。
っていうか、この状況は一体何?
この人は、本当に私が知ってるあのヴァイスなの?
ヴァイスはゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる。
その表情はいつもと変わらない笑顔……いや、顔はいつもの笑顔なんだけど、纏ってるオーラがなんだか黒いような……。前髪の黒髪も若干増えてる気がするのだけど?