元勇者は彼女を寵愛する
Side ヴァイス
僕の髪色は、生まれつき真っ黒だった。
父親と会ったことは無い。母は僕の髪色のせいで周囲の人間から疎まれ蔑まれた。
それでも必死に僕を育ててくれた母は、僕が八歳の時に病に倒れ帰らぬ人となった。
黒髪の僕を引き取ってくれる親族なんていなかった。
災いを招くとまで言われて村から追い出された僕は、一人であてのない道を彷徨い続けた。
飢えに苦しみ、食べ物を盗み、追われ、殴られる、そんな日々の繰り返し。
助けてくれる人なんていなかった。皆、僕に同情するような視線を送りながら手で隠すその口元は笑っていた。
空腹で動けず、地面に寝そべる僕の目の前に、一匹の小さい魔族が現れた。
その魔族は僕に真っ赤なリンゴを見せつけてきたので、それを奪い取り無我夢中で食べた。
リンゴを貪る僕に、その魔族は含みのある笑いを浮かべながら語りかけてきた。
「オマエ、闇の力をモッてる。その力、今の魔王よりツヨい。アナタが新しい魔王にナレ。我々はツヨい王に従う」
それ以来、その魔族は僕に付き纏い、僕の中に眠っていた闇の力の使い方を教えた。
父親と会ったことは無い。母は僕の髪色のせいで周囲の人間から疎まれ蔑まれた。
それでも必死に僕を育ててくれた母は、僕が八歳の時に病に倒れ帰らぬ人となった。
黒髪の僕を引き取ってくれる親族なんていなかった。
災いを招くとまで言われて村から追い出された僕は、一人であてのない道を彷徨い続けた。
飢えに苦しみ、食べ物を盗み、追われ、殴られる、そんな日々の繰り返し。
助けてくれる人なんていなかった。皆、僕に同情するような視線を送りながら手で隠すその口元は笑っていた。
空腹で動けず、地面に寝そべる僕の目の前に、一匹の小さい魔族が現れた。
その魔族は僕に真っ赤なリンゴを見せつけてきたので、それを奪い取り無我夢中で食べた。
リンゴを貪る僕に、その魔族は含みのある笑いを浮かべながら語りかけてきた。
「オマエ、闇の力をモッてる。その力、今の魔王よりツヨい。アナタが新しい魔王にナレ。我々はツヨい王に従う」
それ以来、その魔族は僕に付き纏い、僕の中に眠っていた闇の力の使い方を教えた。