元勇者は彼女を寵愛する
「何それ!?そんな要求無視すればいいわ!!ヴァイスは今までこの世界の人達の為に戦ってきたじゃない!戦う理由もなくなって、これから自由に生きられるはずだったのに……。こんな仕打ちはあんまりだわ!!」
怒りと悔しさで涙を流す私を、ヴァイスは優しく抱き締めてくれた。そして私を宥めながら静かに語り始めた。
「リーチェ、ありがとう。でもね、彼らの言う事も一理あるんだ。『魔王』という人類共通の敵がなくなった今、これからは人間同士の争いが目立ち始めるだろう。僕はね、魔王よりも人間が一番怖いと思っているんだ。優しい笑顔を見せていても、その裏側では何を考えているか分からないからね。中には『勇者』の力を悪用しようとする人達もいるだろう。皇帝は僕の力によってこの世界の均衡が崩れるのを恐れているんだ。強すぎる力は時には脅威にもなる。だから僕みたいな異質な存在はいない方がいいんだ」
「そんなの嫌!ヴァイスと会えなくなるなんて嫌よ!私はヴァイスと一緒にいる!!」
私は泣きながらヴァイスに抱きつき、彼を逃すまいと必死にしがみついた。
「リーチェ。君には自由に生きていてほしいんだ」
「やだ、絶対に付いて行くから!勝手にいなくなっても探しに行くから!絶対に見つけてやるんだから!!」
「ありがとう。その気持ちで十分だよ。だから君は僕の分も幸せになるんだ。これから素敵な出会いもあるだろう。その人と君は――」
私はすぐに顔をあげてヴァイスを見つめた。涙でグチャグチャでも構わない。その先の言葉を聞きたくなかったから。
「そんな事言わないで!私はずっとヴァイスの事が好きだったの。ヴァイスが魔王を倒したら告白しようって決めてたのに……お願いだから、私から離れていかないでよ!」
突然の私の告白に、ヴァイスは目を大きく見開きそのまま固まった。
私達は暫く見つめ合い……やがて、彼も瞳を潤ませながら本音を語り始めた。
「……ごめん。僕も本当はリーチェと一緒に居たい。君が他の奴と一緒になるなんて絶対に嫌だ。そんなの許せるはずがない。僕も……リーチェの事がずっと前から好きだった。ずっと一緒に居たいって思ってたんだ。だけど、君まで巻き込みたくなかったんだ」
振られて離れるなら少しは心が晴れると思った。だけど彼の告白を聞いて、離れられるはずがなかった。
「ううん、巻き込んでいいの。私はヴァイスと一緒に居られれば、それだけで幸せなの。だから、私も一緒に連れてって?」
「リーチェ――」
怒りと悔しさで涙を流す私を、ヴァイスは優しく抱き締めてくれた。そして私を宥めながら静かに語り始めた。
「リーチェ、ありがとう。でもね、彼らの言う事も一理あるんだ。『魔王』という人類共通の敵がなくなった今、これからは人間同士の争いが目立ち始めるだろう。僕はね、魔王よりも人間が一番怖いと思っているんだ。優しい笑顔を見せていても、その裏側では何を考えているか分からないからね。中には『勇者』の力を悪用しようとする人達もいるだろう。皇帝は僕の力によってこの世界の均衡が崩れるのを恐れているんだ。強すぎる力は時には脅威にもなる。だから僕みたいな異質な存在はいない方がいいんだ」
「そんなの嫌!ヴァイスと会えなくなるなんて嫌よ!私はヴァイスと一緒にいる!!」
私は泣きながらヴァイスに抱きつき、彼を逃すまいと必死にしがみついた。
「リーチェ。君には自由に生きていてほしいんだ」
「やだ、絶対に付いて行くから!勝手にいなくなっても探しに行くから!絶対に見つけてやるんだから!!」
「ありがとう。その気持ちで十分だよ。だから君は僕の分も幸せになるんだ。これから素敵な出会いもあるだろう。その人と君は――」
私はすぐに顔をあげてヴァイスを見つめた。涙でグチャグチャでも構わない。その先の言葉を聞きたくなかったから。
「そんな事言わないで!私はずっとヴァイスの事が好きだったの。ヴァイスが魔王を倒したら告白しようって決めてたのに……お願いだから、私から離れていかないでよ!」
突然の私の告白に、ヴァイスは目を大きく見開きそのまま固まった。
私達は暫く見つめ合い……やがて、彼も瞳を潤ませながら本音を語り始めた。
「……ごめん。僕も本当はリーチェと一緒に居たい。君が他の奴と一緒になるなんて絶対に嫌だ。そんなの許せるはずがない。僕も……リーチェの事がずっと前から好きだった。ずっと一緒に居たいって思ってたんだ。だけど、君まで巻き込みたくなかったんだ」
振られて離れるなら少しは心が晴れると思った。だけど彼の告白を聞いて、離れられるはずがなかった。
「ううん、巻き込んでいいの。私はヴァイスと一緒に居られれば、それだけで幸せなの。だから、私も一緒に連れてって?」
「リーチェ――」