つけない嘘
席に戻るとしばらくして、朝から妙にテンションの高かった奈美恵が課長に呼ばれて応接室へ入っていった。

恐らく私たちの報告を受けているのだろう。

課長の話を聞いてくやしがっているに違いないと思いながらも、山本課長と亮についた嘘が自分に重たくのしかかっていた。

どうしようか。

いずれにせよ会社を辞める方向にもっていかなくちゃならない状況だ。

嘘を真にしなければならない。

帰ったら、私が会社を辞めることも含めてこれからの二人のライフプランについてを充に相談してみよう。

充がどういう反応するのかはわからないけれど、とにかく話すことで何かが変わるはずだ。

百合だって言ってたもの、まだ解決できる糸口がある間は大丈夫だって。

糸口があるはずだと信じて突き進むしかない……んだけど。

正直、充の反応以上に、この数週間で膨らんだ私の亮への思いがこの話し合いに水を差しそうで怖い。充との関係をこんなブレブレの気持ちのまま続けていけるのか。

重たい気持ちのまま家に帰ると、既に充は帰っていて、どこかで買ってきた出来合いの弁当をテレビを見ながら食べている。もちろん、私の弁当は買ってきてくれてはいないわけで。

「遅くなってごめん。これから簡単なものなら作れるけど?」

「いいよ。今日は買ってきた弁当で済ませるから」

テレビに顔を向けたまま充は答えた。

きっと弁当で済ませるというのも彼なりの優しさなのだと言い聞かせながら、イライラする気持ちを落ち着かせ、湯を沸かす。

今日は私もカップラーメンでいいや。

熱々のカップラーメンを手にして、充が座っているテーブルの横に腰を下ろした。
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