リセット〜君を救うために、何度でも〜

男が近くにある時計を見て言う。時計の針は五時半を告げていた。ああ、電車が来る時間だ……。

俺は何とか立ち上がり、手すりを頼りに階段を上がる。その間も呼吸が苦しくなって何度か足が止まりかけたが、日和を救わなくてはという一心で体を動かす。

だが、今回の結末も日和が死んでしまったことで終わってしまう。間に合わなかった。ホームには電車が止まっていて、悲鳴が聞こえている。ああ、また……。

「ほら、早く「リセット」って言えよ。じゃなきゃ彼女は助けられないぞ？」

男が俺の隣で言い、今度こそという気持ちで俺は腕時計に触れる。時間を巻き戻す行為を繰り返すうちに急に痩せてしまい、腕時計は今にも腕から外れてしまいそうだ。

「……日和、ごめんな。すぐに助けてやるから」

俺があの言葉を言おうとした刹那、ふわりと温かいものに包まれる。背後から誰かに抱き締められていた。この温もりを、俺はよく知っている。

「類くん、もういいの。もう運命を変えようとしなくていいんだよ」