リセット〜君を救うために、何度でも〜
男が怒鳴る。だけど、もう時間は巻き戻さない。幻の世界で例え救えても、現実の世界で日和が生きていなきゃ意味がない。それに何より、日和が悲しむ顔だけは見たくないんだ!

「俺は、もう現実を受け止める!だからもうこんなものはいらない!」

腕時計を外し、乱暴に男の方に向かって放り投げる。刹那、何かが壊れるような音と共に駅のホームが崩れていく。ホームにいた人、男も全て消えて、辺りには何もなくなった。ただ「白」が広がっている。

「幻の世界が壊れたの。これで類くんは本当の世界に帰れる」

日和がそう寂しそうに言う。本当の世界に帰るということは、もう二度と日和とは会えないということだ。寂しさが込み上げて、また泣いてしまう。泣き方を覚えてしまうと、涙が止まられなくなってしまった。

「……日和、好きだ。ずっとお前のことが好きだった。こんな形じゃなくて、ちゃんと生きているうちに言いたかった」

「……私も、類くんが好き。馬鹿だな、私。もっと早く言えばよかった……」

両想いなのに、こんなにも悲しい。どれだけ互いに好きでも、もう永遠に会えないから。どちらからともなく近付き、唇が触れ合う。幸せで悲しいファーストキスだ。
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