あたしは桜子- 売れないモデル-
智也は知っている。本当は桜子が、不安で胸が一杯なのを。
で、ついでに言うと俺も心配なんだ。


「ねえ智也、どう?」


桜子はヒールを履くと、くるりと回って見せた。


「おお!気合い入れたな、綺麗だよ桜子。」


「うふ、ありがとう。」


2人は一緒に駅まで歩いた。


「ねえ桜子、今日のオーディション終わってから結果はいつ?」


「え?オーディションじゃないの、あたしをご指名なの。もう決まりなの。」


「へえ、そうなの。で、何のCMなの?」


「それは内緒。笑。」


「なんだよケチ。」


「違うの。具体的な事決めるまで、しゃべっちゃ駄目なの。この世界の常識なのー。」


「ふーん、俺でも?おい待てよ、俺でも?」


そう言いながら、桜子の後を追いかける。

駅の改札を抜けホームでやっと並んだ。

桜子は、緊張した顔をしていた。


「ねえ桜子、大丈夫さ。今日のお前すごく綺麗だ。」

桜子はにっこり笑って言った。


「ありがとう。」

< 13 / 89 >

この作品をシェア

pagetop