あたしは桜子- 売れないモデル-
桜子は、いつものように事務所のドアを開ける。


「おはようございます。」


「あ、桜子おはよう。こっち座ってね。」


マネージャーが優しく言うのでびっくりした。まったく、極端に態度を変える。ふーん、けっこう良い仕事なんだと、桜子は思う。

応接室のドアを開けると、この間のハーフの男の子がいた。


「桜子、この子と一緒にオファーがきたのよ。」


少し茶色い髪、ブルーがかった茶色い瞳、白い肌に整った顔立ち。桜子は言葉がなかった。

マネージャーが言う。


「仕事の説明するから座って。」


マネージャーは、2人を見るとにっこりして言う。


「うん、2人とも綺麗よー、かなり売れるかも。笑。」

まったく、馬鹿じゃないの。桜子は、そう思いながらにっこり笑った。

「この子の名前は、タケルークロフォード。えと、こちらは桜子さん。」

マネージャーはお互いの名を紹介した。

タケルは、桜子のほうを向いて言った。


「どうも、タケルークロフォードです。」


「あ、こちらこそ、桜子です。」


マネージャーは、ニヤニヤして言う。


「タケルはハーフだけど、英語できないんだよ。ね?」


タケルは、ムッとするでもなく笑って言う。


「はい、どうも苦手でね。まったく駄目。笑。」


年は桜子の一つ下で18歳だったが、童顔で幼く見えた。

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